“内なる平和”とそれを得る方法は、何千年もの間、世界中の宗教やさまざまな哲学の楽派にとって、大きな課題であり続けてきた。新旧の多くの無伴奏合唱曲による啓示的なシークエンスともいうべきこのアルバム『Traces』は、黙想のための、あるいはその課題に対する答えを見いだすための、荘厳な音空間を創出するものだ。イギリスのボーカルアンサンブルSANSARAの選曲や丁寧な構成、そして高い芸術性に裏打ちされた奇跡的なまでに美しいパフォーマンスは、人々の悩める心を癒やす力を持っている。アルバムの前半にはドイツ語の内省的な詩による楽曲が並ぶ。そしてこれらの曲によって整えられた舞台に迎えられるのは、ウクライナの作曲家Natalia Tsuprykによる「A Quiet Night」とCecilia McDowallの「Standing as I Do Before God」だ。前者はロシアの侵攻に対する超越的な回答ともいうべき曲であり、希望の使者、平和の担い手としての役割を担っている。そして後者は、許しと無条件の愛にまつわる歌詞を、崇高な雰囲気を醸成する楽曲の中で輝かせている。