J.S.バッハは優れた演奏技術をもった鍵盤奏者であったが、ヴァイオリン奏者というもうひとつの才能も持っており、六つの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(組曲)は、発表当時、教育的であると同時に熟練した演奏家たちをも恐れさせる作品として知られた。フランク・ペーター・ツィンマーマンは、40代になるまでこれらの作品に取り組むのを待ったと告白している。それ故、彼の演奏からはこの難曲に取り組む喜びをかみしめている姿が感じられる。ツィンマーマンはソナタ第1番終曲の「Presto」では、目もくらむほどの急上昇と急降下で演奏しながら、驚異的な速度にもかかわらず、見事なまでに音楽が過ぎ去っていく姿を形にして色彩を与え、ソナタ第3番の緩やかな第1楽章のフレーズは、ミニマルミュージックのような現代的な優美さで表現し、パルティータ第1番の速い舞曲には、迫真ともいえるドラマチックな勢いを注いでいる。
作曲者
ヴァイオリン