ブラームスが楽曲に込めた思いをしっかりと受け取り、それをリスナーの心に直接語りかけるような演奏で伝えてくれる。ヴァイオリニストの辻彩奈は2016年に開催されたモントリオール国際コンクールで第1位に、そしてピアニストの阪田知樹は同年のフランツ・リスト国際ピアノコンクールで同じく第1位に輝き、それぞれ注目を集めた。本作ではこれら二人の気鋭の演奏家が、ブラームスによる全3作のヴァイオリン・ソナタを奏でている。辻は、アルバムの幕開けを飾る『ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 作品78』の冒頭で、そのふくよかな音色と優しく歌うような表現で瞬時にして聴き手を魅了する。一方の阪田は、細部にまで神経の行き届いた繊細な演奏でソリストである辻に寄り添いつつ、時にもう一人の語り手としての存在感を発揮する。『第3番』の終楽章では二人の力強い演奏を聴けるが、ここでも阪田のピアノは優雅さを失わず、辻が奏でるヴァイオリンの高音は精妙な輝きを放っている。アルバムのラストでは、辻と阪田の演奏会において定番のアンコールピースとなっている、パラディスの人気曲「シチリアーノ」の優美な演奏が楽しめる。
作曲者
ピアノ
ヴァイオリン