スウェーデン出身のヴァイオリニスト、ユーハン・ダーレネの美しく温かい音色は、後期ロマン派の楽曲を奏でるのに理想的なものだ。2000年生まれのダーレネはすでに熟練の演奏家であり、高い説得力とカリスマ性をもって繊細なビブラートや多彩な音のパレットを使いこなしている。 彼がアルバムの冒頭に置いたのは、モーリス・ラヴェルの「ツィガーヌ」。ラヴェルがヴァイオリンのありとあらゆる難技巧を盛り込んだこの曲で、ダーレネは真に優れた演奏を聴かせており、リスナーを驚愕(きょうがく)させるだけでなく、恍惚(こうこつ)とさせる。彼は、ハーモニックスのパッセージをリリカルかつスイートに奏でたかと思えば、次の瞬間にはハスキーでセクシーな演奏を聴かせるのだ。ピアニストのピーター・フリース・ユーハンソンはそんなダーレネにしっかりと寄り添い、激しいスピードの変化にも見事に対応している。 これと対照的なのがマスネによる人気曲「Méditation from Thaïs(タイスの瞑想曲)」。ここではユーハンソンによる清澄で穏やかなイントロが、ダーレネが奏でる夢見心地で愛らしいメロディを迎える。本作には他にもチャイコフスキーの『懐かしい土地の想い出』の魅惑的な演奏や、オリジナルはヴァイオリンと管弦楽のための作品であるサン゠サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」をジョルジュ・ビゼーがヴァイオリンとピアノのために編曲したバージョンなども収録されており、全体にめりはりが利いたプログラムとなっている。 中でもおそらく最も印象的なのは、フリッツ・クライスラーによる「無伴奏ヴァイオリンのためのレチタティーヴォとスケルツォ・カプリース」だろう。この曲の前半は、クライスラーが得意とするチャーミングで親しみやすい曲調とは違う、瞑想(めいそう)的で思いにふけるような雰囲気を漂わせている。ここでのダーレネは、まるで卓越した演技力を持つ俳優が一人芝居で観客を引き付けるような演奏を聴かせるのだが、曲がより技巧的な後半に入ると一気に華やかな響きを放ってリスナーに新鮮な驚きを与える。 アルバムブックレットの内容 ユーハン・ダーレネは序文で、技巧的な楽曲たちとそれらのヴァイオリニストたちの演奏を聴いたことが、初めてヴァイオリンを手にするきっかけになったと振り返っている。また、音楽学者Jean-Pascal Vachonによる収録曲の詳細な解説や、ユーハン・ダーレネとピーター・フリース・ユーハンソンのバイオグラフィも掲載。 アルバムブックレットはApple Music Classicalのバージョン2.0で利用可能です。Apple Musicのサブスクリプションの一部としてダウンロードして楽しめます。ブックレットにアクセスするには、画面上部のブックアイコンをタップしてください。
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