優しくも凛とした音色と、時に歌うような、時に語りかけるような表現にあふれたパフォーマンスだ。バッハの作品の個性的で奥行きのある解釈によって高い評価を得ているフランス出身のピアニスト、ダヴィッド・フレイは本作で、『Baroque Encores』というタイトルから想像できる通り、リサイタルのアンコールで奏でられるような親しみやすいバロックの小品を取り上げている。プログラムの中心はやはりバッハ。中でも『フランス組曲第4番』の「I. Allemande」は、フレイならではの解釈を存分に楽しめるトラックの一つといえるだろう。その繊細なアーティキュレーションが描き出す夢見心地の音世界は、黙想的であると同時に甘やかでもあり、いつまでもこの音楽に浸っていたいと思わせる魅力にあふれている。また、フレイはこのアルバムで、ヘンデル、母国の先達であるクープランやラモー、イタリア出身のスカルラッティなどの作品も奏でていて、ラモーやスカルラッティの楽曲における輝くようなトリルも強く印象的に残る。
ピアノ
作曲者