重々しくリズムを刻むコントラバスの上に悠然とした旋律を奏でるチェロが加わる第1曲の冒頭で、早くもリスナーを作品の世界へと引き込む。そして、それに続く繊細かつ清澄な響きの合唱は、聴く者の胸に深く染み入る。レクイエムは本来、カトリック教会における死者のためのミサ曲であり、ラテン語の典礼文に曲を付けたもの。しかし、ルター派信徒だったブラームスの『ドイツ・レクイエム』では、ルター派聖書のドイツ語版から作曲家自身が選んだテキストが歌詞になっている。その内容は死者の安息への願いだけでなく、苦悩する若者への慰めを含むものだ。 ピグマリオンは、カウンターテナーとしてのキャリアを持つフランス人指揮者、ラファエル・ピションが2006年に創立した、合唱団とピリオド楽器オーケストラから成る古楽アンサンブル。その高い音楽性と並外れた完成度を誇るパフォーマンスで、大きな称賛を集めている。本作でもその深い洞察に基づく表現は際立っていて、例えば第4曲「Wie lieblich sind deine Wohnungen, Herr Zebaoth(万軍の主よ、あなたのすまいはいかに麗しいことでしょう)」における合唱団とオーケストラの精妙なアーティキュレーションは、この曲が持つ異次元の優美さをこの上なく鮮やかに描き出している。また、ソプラノ歌手、サビーヌ・ドゥヴィエルの気品あふれる歌声や、バリトン歌手、ステファーヌ・デグーの精巧な歌唱も、ピグマリオンの演奏にさらなる輝きを加える見事なものだ。
作曲者
バリトン
アンサンブル
指揮者
ソプラノ