アメリカのヴァイオリニスト、ステラ・チェンは、二つの並外れて優れた協奏曲をペアリングすることで、19世紀と20世紀を見事に橋渡ししている。ベートーヴェンの『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op. 61』の長大な第1楽章におけるチェンは、清らかで牧歌的な響きと、ヴァイオリンのために書かれた温かく叙情的な旋律の魅力を余すことなく描き出している。ピッチの正確さも際立つチェンの表現は成熟の域に達していて、この協奏曲における彼女の輝きに満ちた演奏は、リスナーを引き付ける幸福感と愛情にあふれている。 チェンの本能的とも言うべき詩的な感性は、同国人であるサミュエル・バーバーによる『ヴァイオリン協奏曲 Op. 14』にも生かされている。彼女は、第1楽章冒頭の豊かな広がりを感じさせる旋律を、伸びやかで、空高く舞い上がるような表現で奏で、心を揺さぶる緩徐楽章では胸を打つような切なさを見事に抽出している。激烈な終楽章はヴァイオリニストにとって技術的なハードルが非常に高い楽曲として知られているが、チェンはここでも一切動じることなく、多くの演奏家たちが掘り下げない細部までをも丁寧に描き出す。また、ジャン=ジャック・カントロフが指揮するアカデミー室内管弦楽団による熱のこもった演奏も、全編を通してチェンの演奏にぴったりと寄り添っている。
作曲者
指揮者
オーケストラ
ヴァイオリン