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- 母国を愛し、自然や民謡を清々しくも美しく描いたノルウェーの国民的作曲家。
エドヴァルド・グリーグ
バイオグラフィー
エドヴァルド・グリーグはふるさとの民謡にインスピレーションを受けながら独自のスタイルを作り上げ、世界の音楽地図の上にノルウェーの存在を明確に記した作曲家だ。1843年、港町ベルゲンに生まれたグリーグは、ライプツィヒ音楽院で学び、当初は取り立てて個性的な作曲家になるようには見えなかった。しかし、同世代の民族主義的な作曲家Rikard Nordraakとの出会いによって、グリーグは自らの芸術の未来がノルウェーと共にあるべきだと悟る。湧き上がるインスピレーションに身を任せるようにして書いた『Piano Concerto in A minor op. 16』(1868年)の第3楽章にはノルウェーの舞曲“ハリング”(結婚式で踊られる伝統的な民族舞踊)のリズムが用いられ、それは楽章の終盤に3拍子の“スプリングダンス”へと移行していく。その前に書かれた『Lyric Pieces, Op. 12』(1878年/全10集から成る『抒情小曲集』の第1集)は、『Elves’ Dance(妖精の踊り)』や『Norwegian Melody(ノルウェーの旋律)』をはじめ、後に続く大作へとつながっていく精緻で魅惑的な楽曲にあふれている。そして、ヘンリク・イプセンの戯曲のための忘れがたい劇音楽『Peer Gynt(ペール・ギュント)』(1876年)、深く内省的な弦楽合奏曲『Two Elegiac Melodies(2つの悲しき旋律)』(1880年)、壮大な管弦楽曲『Symphonic Dances(交響的舞曲)』(1898年)をはじめとするグリーグ楽曲の多くは、ノルウェーの音楽文化の真髄を凝縮した作品だった。