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- 2018、51トラック、1時間 37分
アーサー王
Z. 628
『King Arthur(アーサー王)』(1691年)が、パーセルの舞台作品の中で最も広く親しまれてきたものであることは間違いないだろう。これはオペラではなく“セミオペラ”と呼ばれるジャンルの作品で、演劇の中に音楽シーンが挟み込まれるという形式を取っている。俳優が主な登場人物を演じ、歌手が担当するのは脇役のみであったため、音楽の内容はドラマの展開にはあまり関与していない。ブリテン人のアーサー王がサクソン人の王オズワルドに勝利するという物語は、詩人のジョン・ドライデンが創作したもので、実際の歴史やアーサー王伝説とはほとんど関係がない。アーサーが愛する盲目の女性エメリンは、サクソン人に捕らえられて魔法の城に幽閉されてしまう。オズワルドの手下である邪悪な魔術師オズモンドはエメリンにいい寄るが断られ、魔法で辺りを凍らせてしまう。この場面で奏でられる「What Power art thou」は、半音階的和音や震えるようなリズムでいてつく寒さを表現する、スリリングな楽曲となっている。第4幕においてアーサーがオズワルドに勝利したことを祝う壮大な「How happy the lover」では、4小節のグラウンドバスの上で多彩なテクスチャが展開される。最後にはアーサー王に仕えた魔術師マーリンが、やがてブリテン人とサクソン人は団結するだろうと予言し、パーセルは、民謡風の「Your hay it is mowed」や彼の最も崇高なメロディの一つである「Fairest isle」をといった印象深い楽曲を次々と繰り出す。