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- 1972、25トラック、23分
パガニーニの主題による狂詩曲
Op. 43
1926年の『ピアノ協奏曲第4番』と1931年の『コレッリの主題による変奏曲』は、好評を博すことができなかった。これらの作品は、当時ラフマニノフが拠点としていたアメリカのオーディエンスにとって、あまりにも長大なものだったのだ。これに対し1934年の『パガニーニの主題による狂詩曲』は、ガーシュウィンの作品のような快活さと独創性にあふれた変奏曲となっており、初演から成功を収めた。軽快なリズムを持つ主題は、パガニーニによる『24の奇想曲』の終曲から引用されたもの。リストやブラームスもパガニーニの主題にインスパイアされて変奏曲を書いていたが、それらは19世紀半ばの作品であり、新たな変奏曲を作るにはいいタイミングだったともいえる。この狂詩曲は、まるでピアノ協奏曲のように、独奏者がスポットライトを浴びるためのレトリックにあふれている。ラフマニノフは、非常に短い序奏に続いて、同じく短い第1変奏を聴かせた後に、主題を提示する。これはベートーヴェンの『交響曲第3番「英雄」』のフィナーレにおいて、主題が明らかにされる前に変奏があるのを思い出させるアプローチだ。第6変奏でムードが変わると、続く第7変奏では「怒りの日」のテーマが奏でられ、ラフマニノフはこの有名な単旋律聖歌のメロディを、第10変奏、第12変奏、そしてフィナーレにも、遊び心たっぷりに織り込んでいる。また第18変奏「アンダンテ・カンタービレ」においては、パガニーニの主題を音符の上下を反転させた形で奏でることによって、あふれるような思慕の情が表現している。そして、作曲家ラフマニノフの並外れた創造性と共に夢見心地のひとときを過ごした後、この『狂詩曲』はまばゆいばかりのフィナーレへと突き進んで行く。