シューベルトが、生涯最後のピアノソナタとなった「ピアノソナタ第21番 変ロ長調 D. 960」を作曲したのは1828年の秋。亡くなる数か月前のことだった。この作品はかつてベートーヴェンのソナタの巨大な影に隠れてしまうこともあったが、近年では楽曲が内包する崇高なまでの創造性が再認識され、演奏することでその高みに上り詰めることを望む偉大なピアニストたちを引きつけてやまない重要なレパートリーとなっている。ジョージア出身で世界を舞台に活躍するピアニスト、カティア・ブニアティシビリは本作で、限りなく優しく繊細なタッチでこのピアノソナタを奏でており、彼女が生み出すみずみずしい響きはシューベルトの晩年の名作に新鮮な輝きを与えている。「4つの即興曲 D.899」の演奏からも同様に楽曲に対する深い慈しみを感じさせる。