ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館内にあるラファエロ(ルネサンス期イタリアの画家)の展示室。そこで彼が描いたカルトン(タペストリの下絵)に囲まれて演奏する映像を伴った本アルバムは、芸術的な雰囲気にあふれ、耳と目の両方を楽しませてくれる。英国人指揮者Oliver Zeffmanが率いるアカデミー室内管弦楽団が披露する時を超えたプログラムも、この壮麗な背景に完璧にマッチしている。モーツァルトの『Violin Concerto No. 3 in G Major』には、ロシア生まれで、英国で活躍するバイオリニスト、ヴィクトリア・ムローヴァが加わり、爽やかで歌心あふれる深い説得力を持つ演奏を聴かせてくれる。また彼女が弾くバッハの無伴奏バイオリンソナタも、この魅惑的な展示空間に力強く響きわたる。そして、オネゲルの「Pastorale d'ete」では牧歌的な中にも繊細さが光る演奏を導き出し、アルヴォ・ペルトの不朽の名作「Fratres」ではその静けさと偽りのないシンプルさで強い印象を与える、Zeffmanの指揮も見事なものだ。