Shani Dilukaにとって音楽を作ることは、瞑想に匹敵するほどスピリチュアルな行為だ。ミニマルミュージックにおけるリズムの反復と眠りを誘うパターンからタイトルを取った本作『Pulse』では、ピアニストで詩人のDilukaが、フィリップ・グラス、ムーンドッグ、ジョン・アダムズ、メレディス・モンク、ジョン・ケージなどの作品の表面下に潜む趣意と、その微妙な色合いまでをも明らかにしている。しかし、それだけではない。『Pulse』は、生命そのものを維持する力、心臓の鼓動、呼吸、自然界の絶え間ない満ち引き、そして都市の熱狂的なエネルギーについても言及しているのだ。「これは人類がはらんでいる矛盾です」とDilukaは言う。「私たちは自然とつながりながら、正気ではない都市のリズムの中に存在することができるのです」『Pulse』のサウンドは、脱消費主義という考え方や禅の思想に触れた戦後のアメリカにおけるカウンターカルチャーや、現代のダンスミュージック、エレクトロニックミュージックの世界的な広がりも反映している。フィリップ・グラスの作品を中心に構成されたこのアルバムのプログラムには、Dilukaがチネケ!オーケストラと共に奏でたJulius Eastmanの「The Holy Presence of Joan d’Arc」や、ムーンドッグの「Barn dance」、メレディス・モンクの「Railroad」といったエネルギッシュなリフが印象的な楽曲も含まれている。他にもこのアルバムには、ジャズのエッセンスを感じさせるテリー・ライリーの「The Philosopher’s hand」、スコットランド出身の作曲家クレイグ・アームストロングによる波打つようなアルペジオが印象的なナンバー「Melody (Sun on You)」、ダフト・パンクの「Giorgio by Moroder」と「Veridis Quo」のDilukaによるトランスクリプション、Diluka自身が作曲した、フランスのシャンソンが持つメランコリーやサティの影を感じさせる繊細な“歌詞のない歌”「Shimmers」といった楽曲が収録されている。そしてアルバムはグラスによる静かにうねるような作品「Etude 5」でひとまず幕を閉じ、Dilukaはその後に、パティ・スミスの曲「Paths That Cross」の最初の2節である“Speak to me / Speak to me heart”を朗読する。「フィリップ・グラスを初めて弾いてみた時、まるで瞑想しているような感覚になりました」とDilukaは振り返る。「ただ何も考えずに演奏していたら、すべてが流れ込んできたのです。コンサートで演奏するとさらにそれを強く感じました。彼の音楽には人々と共有できる何かが含まれているからです。私はその後、彼がインドの精神世界に魅了されていたこと、そして、ラヴィ・シャンカールと仕事をした経験を持っていることを知りました。同じようにジョン・アダムズも、インドの古い民話に基づいたオペラ『The Flowering Tree』を書いています。彼らの曲を演奏し始める前にはこのような背景を一切知らなかったので、私がこれらの作曲家たちを無意識に結び付けていたことにとても驚きました。私はいつもこのようにして音楽を発見しています。ですので、常に心の中を生まれたままの状態にしておきたいのです。どこから来たのかを知らずに音楽と接するために」彼女によれば、パルスは“多様性の中の統一性”を意味するものであり、世界各地に伝わる古代の知恵や量子物理学の中心にある概念であるという。「フランスの有名な物理学者の友人が何人かいて、そのうちの一人はスティーヴン・ホーキング博士と一緒に働いていました。その学者たちはこう言います。私たちはみんな星の爆発から生まれたのであり、星くずなのだと。つまり、私たちはすべて宇宙とつながっていて、その点において通じ合っているのです。このアルバムには、異なる概念や、世界を見つめる多様な視点を持った楽曲が収録されていますが、そこにはそれぞれを結び付ける何かがあるのです」Dilukaは、シンプルな楽曲を、豊かな洞察力と万華鏡のように多彩な表現で、限りなく繊細に奏でている。また彼女は、“多様性の中の統一性”という自身の主張を補強するため、本作にキース・ジャレットのアレンジによる「Shenandoah」や、ビル・エヴァンスのアレンジによる「Danny Boy」を収録し、アメリカ音楽のルーツとその広がり、さらにはそれがジャズに与えた影響についても言及している。また、ロシア帝国のオデッサから移住してきたユダヤ人作曲家ニコラス・ブロズキーがイタリア移民の息子で人気テノール歌手兼映画俳優のMario Lanzaのために作曲し、ペンシルベニア州の出身でスロベニアとドイツにルーツを持つジャレットが再構築した「Be my love」は、アメリカ文化の多様性を反映した普遍的な例である。「『Pulse』の端緒となったのは、ジャック・ケルアック(Jack Kerouac)による『路上(On the Road)』でした」とShani Dilukaは言う。「この小説は、生き方を模索する人間の魂のつながりを描いたものです。ケルアックは父親の死をきっかけに、若き日を過ごした東海岸から未来の地である西海岸へと、ヒッチハイクの旅に出ることを決意します。ルート66での、農民、売春婦、詩人、知識人といったさまざまな人々との出会いのすべてが、彼の魂の糧となったのです。そしてケルアックはいつも音楽を聴いていました。そう、たくさんのジャズを。でも彼は旅の中でベートーヴェンも耳にしています。このアルバムは、音楽が私たちに自分自身を掘り下げることをうながしてくれること、そして、私たちが世界や宇宙とつながることを手助けしてくれることを表現しているのです」