静かに始まる冒頭から、リスナーをこの楽曲が持つ独特の世界へと一気に引き込む演奏が披露される。ラヴェルが意図した通り、スネアドラムが、曲全体を通して続いていくあの有名な3拍子のリズムを安定したテンポで鳴らす。そしてフルートが主題を奏で出し、夢見心地の雰囲気を醸成する。
「この曲の力はそのシンプルさにあります」と指揮者のグスターボ・ドゥダメルはApple Music Classicalに語る。「リズムは一つ、メロディは二つです。そして、リスナーは約16分間にわたって“音色のクレッシェンド”を経験します。二つのうちどちらのメロディも、聴くたびに何かが違います。もちろん、楽器の音色の違いもありますし、それぞれの奏者がメロディを即興的に演奏しているので、解釈も異なっているからです」。この録音では、素晴らしい響きのテナーサクソフォンをはじめとする各楽器の非常に特徴的な音色だけでなく、この楽曲の特徴の一つである、さまざまな楽器の奏者たちが入れ替わり立ち代わりメロディを演奏する手法の効果も、より鮮やかに表されている。
「その間にクレッシェンドはどんどん大きくなっていきます」とドゥダメルは続ける。「最終的には、フルオーケストラによる巨大なトゥッティが、涅槃(ねはん)の境地に達します。三つのシンプルな要素によって生み出される興奮と歓喜が、そのような境地にまで到達するのです」