オーストリアの作曲家、エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトの『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35』は、彼のキャリアの中で、驚異的なまでの創造性が発揮された時期に書かれたものだ。ヒトラーの政権が倒れるまでは映画のサウンドトラックだけを書くと誓っていた彼は、第2次世界大戦が終わると、演奏会用の作品の作曲に心血を注いだ。
本作に収録されたこの協奏曲の、力強く、説得力あふれるパフォーマンスの土台となっているのは、韓国のヴァイオリニスト、キム・ボムソリがコルンゴルトの音楽に対して抱く深い思いと、彼女の演奏が持つ魅惑的な叙情性、そして円熟した技術がもたらす温かみである。これらの要素は、この楽曲を奏でる上で理想的なものだ。バンベルク交響楽団と同楽団の首席指揮者であるチェコ出身のヤクブ・フルシャによるサポートも申し分ない。彼らの演奏は、ボムソリがメロディを歌うように奏で、そこにリスナーを引き付ける情感と誠実さを吹き込むために大いに貢献している。同じことは、コルンゴルトのオペラ『死の都』のアリアで、「マリエッタの歌」として知られる「Glück, das mir verblieb(私に残された幸せは)」の絶妙な編曲版についても言える。
ボムソリが生まれながらのロマンチストであることは、マックス・ブルッフの不朽の名作『ヴァイオリン協奏曲第1番』における率直な解釈を聴けば明らかだ。彼女はこの作品に華やかさと豊かな色彩を存分に加味し、自身による極上のコルンゴルトと渡り合う、思いのこもったパフォーマンスを実現している。