「音は出した後すぐに消え去ってしまいますが、ライブ録音ではその刹那的な瞬間芸術を何度でも味わえます」。ピアニストの石井琢磨は、メジャーレーベルデビューとなる本作『シューマン・ザ・ベスト』についてApple Music Classicalに語る。このアルバムのメインは、ロベルト・シューマンによる『ピアノ協奏曲 イ短調』のライブテイクだ。 ウィーンを拠点とする石井琢磨は、東京藝術大学やウィーン国立音楽大学でピアノを学び、2016年には権威あるジョルジュ・エネスク国際コンクールのピアノ部門で第2位となった。以降、国内外で旺盛な演奏活動を展開する彼は、その一方でクラシック音楽を身近に感じさせる動画の配信でも大きな人気を集めている。 2025年6月8日、石井はベルリン・フィルハーモニーの大ホールでベルリン交響楽団と共にシューマンの『ピアノ協奏曲 イ短調』を奏で、聴衆を魅了した。さらにそれに続く日本ツアーでも、ハンスイェルク・シェレンベルガーが指揮する同オーケストラと共にこのコンチェルトの演奏を重ね、パフォーマンスに磨きをかけていく。本作に収録された『ピアノ協奏曲 イ短調』は、そのツアーで録音されたものだ。「臨場感を味わってもらうためにライブレコーディングしました」と石井は言う。「ベルリン交響楽団のサウンドは、古き良き伝統を感じさせてくれる深い音色が特徴。加えて団員さんたちが大変仲が良いので、繊細なアンサンブルも魅力的です」と、このオーケストラの美点に触れる。「シューマンのピアノ協奏曲は室内楽的な要素が大変多い。ピアノとオーケストラの音色が絶妙に混じり合っているのが聴きどころです」。これらの言葉のすべては、第1楽章の冒頭からわずか数分間の演奏で完全に証明されている。 また、より室内楽的であり、まるで石井のピアノとオーケストラの音がほほ笑み合っているかのような印象を与える第2楽章の演奏も実に魅惑的だ。コンチェルト以外には、同じくロベルト・シューマンによるピアノの小品も収録されている。「小品はベルリンの郊外でレコーディングしました。部屋を一歩出ると小鳥のさえずりが聞こえてくる自然あふれる町です。そのおかげもあってか、心穏やかになれる音色で録音できました」
作曲者
ピアノ
オーケストラ
指揮者