多彩な音色としなやかな表現で、二つの偉大な協奏曲から豊かな情感を引き出した辻彩奈。2016年に開催されたモントリオール国際音楽コンクールで第1位となって注目を集めた気鋭のヴァイオリニストだ。2024年に、ピアニスト阪田知樹とのデュオでリリースした『ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ全集』でも高い評価を受けた辻が本作で取り上げたのは、ブラームスとグラズノフのコンチェルト。いずれもそれぞれの作曲家を代表する作品の一つだ。ブラームスの『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調』は、パスカル・ロフェが指揮する大阪フィルハーモニー交響楽団とのライブ録音。辻の音色の幅広さは冒頭楽章での登場時から際立っていて、緩徐楽章では、優美な旋律を奏でるその繊細な表現がリスナーを夢心地にさせる。そして、民謡風のフレーズが印象的な第3楽章では、オーケストラと息を合わせた切れ味の鋭い演奏で高揚感を生み出している。一方、グラズノフはロシアの作曲家だが、『ヴァイオリン協奏曲 イ短調』はドイツロマン派の香りが漂う作品だ。ケンショウ・ワタナベが指揮する東京フィルハーモニー交響楽団と共演するこのコンチェルトもライブ録音。ブラームスのコンチェルトと同じように、緩徐楽章のメロディに甘美さをもたらし、第3楽章の民謡風のフレーズをさまざまな技巧を駆使しながら軽やかに奏でるさまは実に見事だ。
作曲者
ヴァイオリン
指揮者
オーケストラ