アドルフ・アダン

ベルリオーズはアドルフ・アダンの師であるボワエルデューの音楽を、パリの優雅さを感じさせるものとして絶賛した。この評価は弟子であるアダンにもそのまま当てはまる。彼は、1803年にパリで生まれ、ボードビルのための曲を書くことで作曲の経験を積み、Gymnasie Dramatiqueの劇団付き楽団で舞台音楽の感性を磨いた。アダンは親しみやすく、楽しい音楽を志していた。1834年に初演されて、その後40年の間に1,000回以上も上演された『Le Chalet』をはじめ、36作ものオペラコミックを書いた。彼の作品はきらめくようなウィットと優美さに満ちており、また歌手に敏しょう性を要求するものも多い。『Le Postillon de Lonjumeau』（1836年）のアリアでは、テノールを“成層圏”のhiDにまで上昇させる。現在では、クリスマスソングとしておなじみの「Cantique de Noël（オー・ホーリー・ナイト）」（1847年）や、『Giselle』（1841年）、『Le Corsaire』（1856年）などのバレエ音楽が最もよく知られている。