バイオリニスト、ダニエル・ホープは本作で、リスナーを19世紀終盤から20世紀初頭の宝物のような音楽の世界へといざなってくれる。自然科学や工業技術が著しく進歩したベルエポックは、表面的な華やかさの一方、その裏に暗闇が潜む時代ではあったが、芸術の分野でも大きな花が咲き、中でも音楽はひときわ豊かな実りを結んだ。アルバムの中核をなすショーソンの「Concert for Violin, Piano and String Quartet」は弦楽四重奏ではなく、弦楽オーケストラ版でレコーディングされたもの。ホープはそのショーソンやラヴェル、ドビュッシー、フォーレら作曲家によるフランス音楽と並べて、エルガーやシェーンベルク、エネスコらヨーロッパ各地の同時代の作曲家たちの作品も取り上げている。ホープは彼らの楽曲を素晴らしい音楽仲間と共に奏で、あふれる喜びと同時に示唆に富んだ内容のアルバムを作り上げた。