ウィーン・フィルが毎年夏に開催する「Sommernachtskonzert(サマーナイトコンサート)」に初登場したヤニック・ネゼ=セガンとエリーナ・ガランチャは、色彩とムードが次々と移り変っていくプログラムに全身全霊で臨み、会場であるシェーンブルン宮殿の夜を興奮の渦に巻き込んだ。本作はその模様をライブ録音したものだ。演奏されたのはフランスの作曲家たちによる実に多彩な楽曲。プログラムは『Carmen Suite No. 1(カルメン 第1組曲)』からの3曲でスタートし、それに続いてオリジナルオペラ版『Carmen(カルメン)』の「Habanera」をガランチャが魅惑的に歌い上げると会場は一気に盛り上がる。リリ・ブーランジェの「D’un matin de printemps(春の朝に)」は小金色の光を放ちながら、ウィーン・フィルのメンバーが嬉々として奏でるベルリオーズの「Le Corsaire Overture(序曲「海賊」)」を迎えるための雰囲気を整える。続くグノーのオペラ『Sapho(サッフォー)』からの「O ma lyre immortelle(不滅のリラよ)」では、旋律を愛撫するかのようなガランチャの歌唱に心を奪われる。また彼女が、サン゠サーンスのオペラ『Samson et Dalila(サムソンとデリラ)』からの「Mon coeur s’ouvre à ta voix(あなたの声に私の心は開く)」で官能的な歌声を響かせた後には、スリリングな解釈によるラヴェルの「Boléro(ボレロ)」が続く。決して飽きることなく、臨場感たっぷりに楽しめるライブアルバムだ。