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- 1973 · サー・ゲオルク・ショルティ、シカゴ交響楽団、ウラディーミル・アシュケナージ
ウラディーミル・アシュケナージ
バイオグラフィー
ロシア出身のピアニストで指揮者、ウラディーミル・アシュケナージは、長きにわたってクラシック界に君臨してきた偉大な音楽家の一人だ。彼が1972年にアンドレ・プレヴィンが指揮するロンドン交響楽団と共にレコーディングしたラフマニノフの『No. 3』(1909年)は、激しさの中にも潮の満ち引きを思わせるようなナチュラルで豊かな表現が光る名演で、多くの名ピアニストたちによるピアノ協奏曲の膨大な録音の中でもベストのものの一つに数えられる。同じ組み合わせでレコーディングしたプロコフィエフの協奏曲全集では、この大作曲家の、遊び心にあふれ、アクロバティックで、高度な技術の見せどころを満載したコンチェルトを見事に奏で、世界中のリスナーを魅了した。室内楽では、火花を散らすような『Kreutzer Sonata(クロイツェル・ソナタ)』(1803年)に代表される、イツァーク・パールマンとのベートーヴェンのバイオリンソナタ全集や、1981年にパールマンとリン・ハレルとのトリオで風格ある演奏を披露したチャイコフスキーの『Piano Trio in A Minor』(1882年)の音源などで最上級の成果を上げている。1937年、当時のゴーリキーでピアニストの父と俳優の母との間に生まれたアシュケナージは、8歳でモスクワ音楽院附属中央音楽学校に入学。その10年後にモスクワ音楽院で学び始め、モーツァルトやベートーヴェン、母国ロシアの作曲家たちのレパートリーを身に付けていった。そして1963年にロシアを離れた彼は、移り住んだロンドンでDeccaと契約し、以後、この歴史あるレーベルから膨大な数のアルバムをリリースした。1970年代の半ばからはタクトを振ることも多くなり、指揮者としての活動の初期にフィルハーモニア管弦楽団とレコーディングしたチャイコフスキーの『Symphonies Nos. 4-6』で、早くも高い評価を得た。「ずっと指揮者になりたかったのですが、たまたまピアノを弾くことになったのです」と語るアシュケナージは、2020年に引退するまで、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、シドニー交響楽団などの音楽監督や首席指揮者を歴任し、理想的な形でその思いをかなえた。