ジャック・オッフェンバック
バイオグラフィー
ジャック・オッフェンバックは、1858年に初演された風刺的なオペレッタ『Orphée aux enfers（地獄のオルフェ／天国と地獄）』の「カンカン」こと「Galop infernal」で最もよく知られている。そして、1860年代のヒット作である『La Belle Hélène（美しきエレーヌ）』（1864年）や『La Grande-Duchesse de Gérolstein（ジェロルステイン大公妃殿下）』（1867年）も広く親しまれてきた。1819年にケルンで生まれたオッフェンバックは、10代の半ばでパリに移り住み、その後は生涯のほとんどをパリで過ごしている。彼は、多くの偉大な作曲家たちのオペラをパロディ化しつつ社会や風俗を風刺するという作風において際立った才能を示し、100を超えるオペレッタを作曲した。オッフェンバックのしなやかなメロディや快活なリズム、そして効果的なウィットは、彼を“シャンゼリゼのモーツァルト”と呼んだロッシーニや、ビゼー、ドビュッシーといった作曲家たちからも称賛された。また、ロンドンで活躍した台本作家と作曲家のコンビGilbert & Sullivanや、ウィーンのヨハン・シュトラウス 2世のオペレッタにも影響を与えるなど、その名声は国外へもとどろいた。一方で本格的なオペラでの成功も目指していたオッフェンバックは、1864年のオペラ『Die Rheinnixen（ラインの妖精）』はヒットさせることができなかったものの、晩年に取り組んだ未完のオペラ『Les Contes d’Hoffmann（ホフマン物語）』は、1880年に彼がこの世を去った後、世界中で広く愛されることになった。