ドビュッシーと並ぶ印象派の大家として知られるモーリス・ラヴェルだが、作風はあくまで古典的な形式に立脚しており、本人もモーツァルトなどの影響が強いと述べている。彼は色彩豊かなオーケストレーションを得意とし、管弦楽の魔術師と称えられるとともに、その精緻な作風から、スイスの時計職人とも例えられた。バレエ「ダフニスとクロエ」や "ボレロ" などは、その最たる成果と言えるだろう。彼はまた、母親がバスク地方の出身だったことからスペインの音楽にも興味を示しており、二つのピアノ協奏曲やバイオリンソナタにはこうした民族色が即興的に織り込まれている。